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伝統のスローフードを未来へ残そう。

 御前崎に残る伝統技術のひとつにかつお節の「手火山(てびやま)製法」があります。かつおは海洋国家日本で、昔から親しまれる食材。その誕生は室町時代にさかのぼると言われています。御前崎で現在も継承される、スローフードの原点かつお節についてご紹介しましょう。
 生の近海かつおを原料に、いまも匠と言われる人たちによって伝えられる伝統的なかつお節製法「手火山」は、最高品質のかつお節を作る製造方法と言われています。御前崎港で水揚げされたかつおは、同地区内の手火山式製造所で切り分け、セイロに置かれたかつお節はかまどの直火で燻しと乾燥を繰り返し風味と香りをじっくりと熟成します。幾重に積まれたセイロはかつお節と火の状況を見ながら積み替えられます。この「培乾」の後、カビつけされ、天日による日干を繰り返し、やっと完成するのです。その技術は、先人たちの時代の不安定な食料供給事情と季節など自然の環境を背景に考えられた、手間と時間、そして経験と技を必要とする無二の製法なのです。
 350年以上の歴史をもつ「手火山」は、御前崎地区には約190年前に志摩の国(三重県鳥羽市・志摩市とその周辺地域)の山際初次郎によって伝えられていました。最盛期の昭和30年当時には約50軒もの製造所を数えていたそうです。まさに、戦後の経済成長の中でこの地域と人々の活力を支えた重要な産業だったのですが、現在では3軒を残すのみとなっています。食べてみると。口いっぱいに広がる芳醇なうま味、かつおの臭みを一切取り払い食欲に通じる薫りだけを残した風味は、上品でありながら濃厚なおいしさでいっぱいです。食材としての最高峰のかつお節は、昔も今も同じ方法「手火山製法」でしかその価値を生み出すことができないのです。
 現代社会生活における「いやし」や「安らぎ」をテーマに「体験」を通じ御前崎の自然や、漁業と水産加工の資源や文化を発信し、新たな交流と地域の活性化を図ることを目的に活動しているのが、「特定非営利活動法人(NPO)手火山」です。「手火山式のかつお節」を現在も作る3軒の製造所は、いずれも御前崎港の地区にあり、現在、NPO手火山の代表を務める吉村さんも手火山式製造所「カネマゴ」で自らかつお節づくりにあたっています。「今年は春から寒く、近海かつおの水揚げ量も少ないけれど、いいかつお節ができるようにがんばっていますよ」と話していただきました。御前崎の風土とともに残る伝統的な食文化「手火山製法のかつお節」、その匠の技をぜひ一度お確かめください。